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         写楽の描く女形について   


                         
             左 「花菖蒲文禄曽我」より二代目瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木と中村万世の腰元若草         右 「敵討乗合話」より中山富三郎の宮城野

 写楽の初期の大首絵といわれる作品には、歌舞伎の「女形」を描いたものが、十図存在します。そこでよく指摘されるのが、描かれているのが、女ではなく「男」にしか見えず「美しくない」、それゆえ役者に嫌われたのではないか?という点です。ここが、写楽が鳥居派・勝川派・歌川派と異なる所です。実際、上の左図の作品を、「単なる二人のおっさん」と言った女性の方がおられました。私もそのご指摘は、まったくその通りだと思います。ですが、私たちは一体何故そう感じるのでしょうか?
男女の性差

 それで、そもそも外見から分かる「男女の違い」って何だろうと、考察してみました。

 写楽は、なんといっても大首絵が評価されてますから、「胸から上で体の前面」を比較してみます。(これはあくまでも相対的なものです。例えば眉の濃さが、男性と変わらない女性もいるといった具合です) 男女の体格差は、体の大きさ・皮下脂肪と筋肉量の差から始まって、大きく骨格の違い内分泌系・性ホルモンの違いがあり、もっと細かく言うと以下の差異があります。
   
 1. 男性の方が 肩が大きく、広く、体の幅がある
 2. 男性の方が、腕が長い。また、手が大きく、手の幅も大きい。また筋肉質である。(特に二の腕)
 3. 女性のひじは、ちょうどひらがなの「く」の字の様に、体に沿って湾曲している。
 4. 女性はおしなべて「なで肩」で、角度も小さい(ただしラテン系の男性、なで肩が多い)
 5. 男性は頭が大きいので、それを支えるために首も太い。
 6. 女性の方が指が華奢で細い。

 こうやって見ると、首から下の描き方では、写楽も特に問題はなく、女形が女性に見えます。(ためしに上の絵の顔の部分を隠して見て下さい)

それでは次に「顔」の部分の「男女差」を見てみましょう。

 1. 男性の方が 一般的に鼻・口が大きく鼻の柱がしっかりしている。顔全体の大きさも男性は大きい
 2. 口・顎は女性の方が小さいが、唇が女性の方が厚く、ふくよかである。男性は顎・えらなどががっちりしていて大きい。
 3. 額は男性の方が平らで広く、女性は丸くカーブしている。また男性は眉の上の骨がより隆起している。
 4. 目は女性の方が大きく、眼球そのものの丸みが大きい。また女性の方が白目の部分が大きい。そして濡れている。一方男の目は平板。
 5. 視線は男性がレーザービームのように鋭く、一方女性は、ランプやろうそくのような柔らかい光です。(ただし相手を強く非難している時は、視線が   突き刺さってきますね。逆に絡んでくるような視線もあります)
 6. 女性の髪の柔らかくてボリューム艶・張りがありますが、男性はかたくてゴワゴワしている。眉毛も同様。
   などなど。なお、4.6は加齢と共に失われる傾向があります。

                    

 ダビンチのモナリザ。昔から自画像説があるのは、頭の部分が大きいことと、三角の構図のため右腕が長く見えることと、手の幅が大きいことも関係していると思われます。右はフェルメールの真珠の首飾りの少女

 実際に、西洋の名画で性差の特徴を見てみます。モナリザは、首が長いのですが、頭が大きく、額の張りと鼻筋が男性的で、顔立ちがダビンチの自画像と共通性があると言われています。一方肩の角度は女性的ですが、腕は長めに描かれています。絵として複合的・多面的な要素が多いです。
 それと比べてフェルメールの「真珠の首飾りの少女」には、省略強調があります。絵では女性の命とも言われる髪の毛が、ターバンで覆われていますが、女性らしい頭の丸みがかえって強調されています。そして物言いたげな可愛い唇と華奢な顎とふくらとした頬があります。また右側の目の瞳は、思い切って端に寄っています。それにより光が反射した目は潤いが感じられ、女性らしい白目の大きさ瞳の丸さがよく分かります。
 どちらの作品も、こちらが絵を眺めているのに、反対に「絵」から見られているという印象を受けます。不思議ですね。
       参考文献  「美女の骨格 名画に隠された秘密」  宮永美知代著 青春新書

 話は写楽に描く女形に戻ります。これは歌麿が描く女性と比べるとよく分かるのですが、以前にあげた写楽の特徴として、
 1.頭の中の顔の部分が大きい。2.鼻が大きい顎がむっちりとしている。3.それから耳の前のこめかみの髪の生え際の形が狭い。
 4.顔が三角形に近いので底辺となる首の太さが強調される。目が小さく平らで、白目が小さい
検証してみます。下左図は、喜多川歌麿の代表作の「当時三美人」です。この右下の「難波屋おきた」の頭を少し大きくし、目と眉を対照的にし、鼻の中央の線が切り、こめかみの髪の生え際のカーブを変え、首を太くして顔全体を三角にしてみました。どうでしょうか。男性に見えませんか?

    
     喜多川歌麿  当時三美人(寛政の三美人)                     右下の、「難波屋おきた」の頭を大きくして首を太くしてみた

        
二代目瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木

 次に写楽の描く女形の図を加工してみました。左図は「二代目瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木」で、右はその絵の首を細くして、顎を小さくし、目も大きく、しこめかみの髪の生え際のカーブを変え、最後にバランスを取って体の幅を広げてあります。それだけでかなり印象が変化します。それでいて絵は崩れていないのがお分かりかと思います。

 こういったことから、写楽には顔を描く時に「ひな形」とでもいうべきものがちゃんとあり、それを目の前の役者の顔に当てはめて描いているらしいと推察されます。

 話は元に戻りますが、これだけでは「写楽の描く女形がおかしい・ある面不気味だ」というのが説明できません。それで次の項で、さらに深く考察していきます。